わたしが同性カプを推し続けられなくなる未来について

推しの人生に関わりたくない

限界オタクの一派として「推しのことを極限まで応援したいけど推しの人生には関わりたくない」という派閥があります。わたしはこれです。近づきたいけど遠くにいたいという屈折した感情を持っています。

わたしはこの信奉と似たロジックがBLや百合などの同性愛関係を推すときにもはたらいていることに気付きました。

簡単にこのことを説明してみます。わたし自身は異性愛者なので、異性の推しを推すときには常に「推しと恋をしてしまうかもしれない」という危険が寄り添います。自分と推しが恋愛関係になるなんて最悪なことになりたくない。

しかし推しが同性愛者だと、この心配が無くなります。推しは別の推しと仲良くしてくれていれば良い。わたしはその関係を推せばよいし、そこに割って入る可能性は無い。推しのことを推しながら、推しの人生からなるべく遠ざかることができます。(カップルの間に入って3人で遊びたいオタクは許さない無視するものとする。)

危機感

ところで最近のわたしには危機感があります。

異性愛が人口に膾炙するようになってきた昨今、もはや「カップリング」という言葉は性の概念から解放されつつあります。「女だから男を恋愛対象にする」から「女でも女を恋愛対象にしてよい」に変わりつつあるのが現在ですが、将来的には性別によるフィルタリングが無くなって単に「誰かを好きになってよい」という倫理にしかならないのではないかと思うのです。

こうなると、性別によって恋愛対象のフィルタリングから逃れていた上記のロジックが通用しなくなります。誰でも推しの恋愛対象になれてしまうと、わたしが推しの人生に関係してしまう危険性が再浮上してしまうのです。

このような未来になった場合、わたしはどうやって同性カプの推しに安全性を感じれば良いのでしょうか。いやそもそもどうやって関係性のオタクをやっていけば良いのでしょうか。これが今わたしの持っている危機感です。

そもそも論

まあ第一、この話は大前提として捻くれオタクの巨大な自尊心が顔を出しています。つまり、わたしと推しが関係性を持ってしまう可能性があると思ってしまっている点です。万に一つもあるわけねーだろ。ココア飲んで寝ます。

みなさんもあんまり深く考えず気楽に推しを推そう。良い推しライフを!

わたしの推しを見てくれ:VTuberミュージックビデオ編

「歌ってみた」文化が2007年頃ニコニコ動画で流行り始め、10年以上の時が過ぎました。2017年末からインターネットをにぎわせたVの者のムーブメントは「歌ってみた」にも波及し、それからの1年間でVの者による「歌ってみた」が多く投稿されました。

わたしはこの中でも特に、Vの者でないとできないようなミュージックビデオに感動しました。歌を歌うだけではなく、Vの者は動くことができる。それも、自分自身として。

この記事ではわたしの「推し」であるミュージックビデオを感想と共に紹介します。正確には、歌と共についている動画を紹介していると言った方が正確ですが……。

御託は良いから動画だけ見せろって方は、以下の再生リストを使ってください。

それではひとつずつ見ていきましょう。

ヒメヒナ:ロキ

2018年11月に投稿された田中ヒメさん・鈴木ヒナさんによる『ロキ』です。この動画はヤバいので必ず見ましょう。

何がヤバいか? 以下の通りです。

まずなんといっても、むっちゃ動くこと。3D Vの者の魂のキラメキを感じます。機敏に踊るし髪などの揺れモノはぎゃんぎゃん動くし指先まで細かく動く。田中ヒメさんが元気にぴょこぴょこ飛び跳ねたり鈴木ヒナさんがクールに決めてたりするところをばっちりと映し出しています。キャプチャー技術どうなってるんですかね。動きをかっこよく映すカメラワークも良い。

ヒメヒナなりの遊びがあることもグレイト。夜の街で撮影することによって『ロキ』が持つかっこよさを表現しつつ、変な踊りや替え歌など彼女たちが普段の生放送で行っているような冗談を自然に入れています。この遊びがあるから動画が生きています。また、遊びを入れつつも耳障りは良いというのも、リピート再生で聞けるので最高。

ヒメヒナのミュージックビデオは全部ヤバいので見てください。

花譜:糸

2018年12月投稿。スクエア動画幾何学的なエフェクトや無機質な空間でクールにまとめています。全体的にRGBと白・黒に絞っている色使いが好き。オタク話をするとこの動画の映像制作は自主制作アニメで有名な川サキさんです。

別動画の『またねがあれば』もシンプルですがスタイリッシュです。目の光り方にやられます。

花譜さんの動画は全部ヤバいので見てください。動画の本数を増やしつつクオリティを担保しているのがヤバい。インスタやTwitterもかっこいいです。

そういえば『糸』はオリジナル曲なので「歌ってみた」ではないのかもしれませんが、気にせず次に行きます。

燦鳥ノム&富士葵&ときのそら:檄!帝国華撃団

2018年11月投稿。ニコニコによくある合唱モノって立ち絵を動かしまくるのが多いですが、3Dだと一緒に歌えます。

この動画は開始数秒の和風サイバーな雰囲気でグッとひかれました。元々和風な曲で人選もそれっぽいものである中、Vの者の電子的な響きを入れてアクセントにしているのが好きです。

あと燦鳥ノムさんは『ドラマツルギー』がかっこいいので見てください。動きについているエフェクトがイチイチかっこいい。

MonsterZ MATE:love letter.

2018年11月投稿。MonsterZ MATE、コーサカさんのソロ曲です。くっそかっこいいんですが……。これ3Dモデルをそのまま白い空間に落とすだけだとそこまで映えないと思うんですが、ちゃんと世界に落とすと「おっ、この人渋谷にいそう」と思っちゃいます。完全に生きてます。

わたしはリアルの街を歩きながら、そこと少しずれた位相にいるかもしれないVの者に思いを馳せ、街の細部を観察する行為が好きです。「バーチャル交差点」と呼んでいます。この動画を見てしまうと、若者の街を歩くとき意識せざるを得ません。宮下公園の前の通りとかどうですか。

東雲めぐ:ぐみのうた

2018年8月投稿。これは半分くらい、XVIさんのAniCastで作られる東雲さんの表情がヤバいという話です。その上に東雲さんなりの演出が付いていて良い。この動画に入ってるもの全部東雲さんがいる世界の中で完結しているんですよ。直撮りでこれなんです。実際に東雲さんがグミを持っているし、視聴者から集めた画像を手に取っている。エモ

『ぐみのうた』は作詞作曲振付ぜんぶ東雲さんが作ったもので、普段の生放送でも披露なさってました。生放送主体の方にとって、単なる動画で終わらせずに普段の活動とも紐付けられるって強いんじゃないでしょうか。

宗谷いちか:Flamingo

2018年12月。3Dが続いたので2Dも挙げてみます。これ影の造形凝ってるんですけど分かりますか?

2Dの方の動画は歌っているところをそのまま映している場合と、ファンからの似顔絵などを使っている場合がありますが、この動画は前者です。確かにそこに宗谷いちかさんがいるんですよ。

2Dだけの中、如何にして面白いことするかは人によって工夫の仕方が違い、まだまだ発展するんじゃないかなあと睨んでいます。Vの者以前の時代にも立ち絵や一枚絵を動かすことで動画を構成する手法はあったわけですが、それがLive2Dなどを使って動くことは少なかった(はず)です。どのような表現手法がこれから出てくるのか楽しみにしています。

えのぐ:えのぐ5thライブ in 秋葉原

もはや「歌ってみた」ではなくライブです。2017年夏コミケで話題になった岩本町芸能社をご存じですか? あのときの岩本町芸能社の印象が残っている方はこのライブを見てください。「えのぐ」のライブはこの1年半で更に良くなりました。これは2018年12月のもの。

5人も動いているのにどうしてここまで機敏に動き回れるんですかね? というかダンス上手いのでは? カメラワーク上手すぎ。何が起こっているんだ……。

「えのぐ」は他にも野心的な取り組みをしていて、たとえばYouTube全球動画機能を使い、グリグリ動かして見れるライブをしてたりもするのでこちらも是非。これって観客がいると肖像権の問題などで少しやりにくくなるはずで、VRだからこそ観客入りライブをやりながら同時に全球動画配信できるんじゃないかなんて思ったりもします。

ときのそら&銀河アリス:TUBEOUT! Vol. 1 リアルタイムARライブ

ライブ繋がりでもうひとつ。こちらは2018年12月のARライブです。仕組みとしては薄いスクリーンに投影していた模様。こういう形のライブって初音ミクのマジカルミライが有名だと思いますが、Vの者がそれをやると魂が入るのがよく分かります。意識できないレベルのレイテンシでコール&レスポンスできるんですよ。あとキャプチャもヤバくて、ツインテールはぎゃんぎゃん動いてるのに腕と不自然な位置関係にならないし、2:30あたり、銀河さんの歌が終わった後ときのそらさんが駆け寄るシーンで二人は自然に手を繋ぐんですよ。

あとこのライブ、光の使い方が上手いなと思います。投影式って明るいと見えなくなっちゃいますが、それでもライトをばちばち点ける。また、観客が持っているキンブレを後ろに反射させることで会場を広く見せている。熱狂できる仕組みになっていて凄い……。

これ斜めから見たらどうなるのか気になるので、是非行ってみたい……。

色々ごちゃまぜゾーン

鷹宮リオン&ドーラ&ロボ子さん&白上フブキ

2018年11月投稿。ポップな雰囲気が良いです。

ロボ子さん:メルティランドナイトメア

2018年11月。ロボ子さんの3Dってどうしてこんなに惹かれるんでしょうか。

周防パトラ:ぶいちゅっばの歌

2018年8月。実写を入れるのハニストっぽいですね。パトるよ。

でびでびでびるさんのこっちも見てください。

樋口楓:MapleDancer

2018年7月投稿。シャフトっぽい和風演出が好きな動画です。

小山内めい:メイムメイム

2018年4月。YouTuberあるあるの自己紹介動画を歌にするとは……。

あとこっちのバニラ替え歌も好きです。

天神子兎音:チュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!

2018年9月。漫画的演出はVの者に似合う。

森中花咲:バレリーコ

2018年9月。こっちは漫画的演出に加えて和風要素をちりばめて雰囲気を作っています。細かく画面を変えることで2Dモデルの動きの小ささを補強している点も好き。

バーチャルねこ:Time Elapsed

2018年10月。にじさんじの出雲霞さんのためにupd8のバーチャルねこさんが作った曲です。もはや歌っていませんが動画を見て欲しいだけなので気にしないこととします。この時点で出雲さんは公式には2Dモデルしか無い中、ファンメイドのMMDモデルを使って演出しつつ、あまり3Dっぽさを出さないことでアバターの境界線を上手くぼやかしている気がします。あと墨汁がかっこいい。

ぴろぱる+コーラス17名:ベイビーアイラブユーだぜ

2018年12月。ぴろぱるさんは書道うまうま勢であることを生かして歌詞を書くのカッコイイです。他の動画でも歌詞をばばんと大きく書いています。自分の「強み」だけを抽出して戦えるのはVの者の良さです。

コーラス:あくまのゴート&朝霞しお&飛鳥ひな&天城てん&黒井しば&さくらみこ&ジョー・力一&白上フブキ&でびでび・でびる&春崎エアル&ふくやマスター&星月せい&町田ちま&皆守ひいろ&夢追翔&レンチ

ミソシタ:ポエムコア ミソシタ#1

2018年3月。これなに?

芙蓉セツ子:ゴンドラの唄

2018年7月。この方以外に大正歌謡の動画を出しているVの者を知らないです。圧倒的な知識量を下地に作られた創作には驚嘆します。

少しばかりの考察

如何にしてVの者がミュージックビデオの中で「生きている」か、分かってしまったでしょうか? わたしはこの「生きている!」と感じてしまう瞬間に酔いしれてしまっていて、夢中になっています。

もちろんVの者以前の時代にもアバターを使った「歌ってみた」動画はありました。たとえばちぃむdmp☆さん(愛原圭織さん&桃箱さん)の『噛むとフニャン』(2010年11月)はわたしのお気に入りです。

また、多すぎて挙げきれませんが、MMDを使った「歌ってみた」「踊ってみた」が流行したことは言うまでもありません。

しかしこれらはあくまで「アバター」という意識が強かったり、創作の中で閉じている存在であったりしました。対してVの者は生きています。ダンスをちょっとミスったり、自由なタイミングでまばたきをしたりします。さて、ここまでに出てきた方々はまばたきをしていたでしょうか? 自然すぎて気に止めなかったのでは? そういうリアルっぽさが、わたしは好きです。

あとがき

ホントは町田ちまさんの『変わらないもの』とか海月ねうさんの『jelly girl』とか因幡はねるさんの『ハロ・ハワユ』とかKMNZさんの『歌舞伎町の女王』『そばかす』とか緑仙さんの『ロキ』とかにゃるらちゃんさんの『さくらんぼキッス』とか書きたかったんですが、話が広がりすぎてしまうのでやめました。

あと、Vの者のミュージックビデオって歌詞を文字で全部書いてる人多いよねって友人に指摘されました。これってVOCALOIDの歌動画由来の文化なんですかね?

他にも「この推しを見てくれ!」ってオススメがあれば、是非はてブコメントで教えてください😊😊😊

良い推しライフを!